ワクチン接種拡大が状況を変える – 伊藤わたる

ワクチン接種拡大が状況を変える

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国立感染症研究所・鈴木基感染症疫学センター長

国内における新型コロナウイルスのワクチン接種は今月20日で2回接種を受けた人が2938万人に上り、全人口の2割を超えた。65歳以上の高齢者に限れば6割超となる。厚生労働省の調査では、ワクチンを2回接種した高齢者の感染者数(人口10万人当たり)は未接種の高齢者に比べ、10分の1以下に抑えられている。ワクチンの接種効果について、厚労省の助言組織「アドバイザリーボード」に参加する国立感染症研究所感染症疫学センター長の鈴木基氏に聞いた。(7月23日公明新聞より)

■高齢者の感染割合激減、東京都では20%→4.9%

――現在の感染状況について。

感染者数の増加に伴い、今月12日から4回目となる東京都への緊急事態宣言が発令され、沖縄県では宣言が延長された。埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県では、まん延防止等重点措置の適用が延長されている。

傾向としては、20~30代の若い世代、また40~50代の活動量の多い世代の感染者が大幅に増えている。

40~50代では、重症者数の増加も深刻だ。インド型の変異株(デルタ株)が重症化の要因だとの議論もあるが、海外などのデータを見ても明確には言い切れない。基本的には、感染者の増加に伴い、一定数が重症化しているということだ。

――ワクチン接種の効果は。

今、全体の感染者数に占める65歳以上の割合は去年の夏以降で最も低い。感染者が多い東京都を見ると、新規感染者のうち高齢者の割合が今年3月頃には20%以上だったが、直近のデータ(7月7日)では4・9%まで下がっている。高齢者へのワクチン接種が要因であることは間違いない。

日本で最も接種されているファイザー社製のワクチンは、臨床試験やワクチン接種が進むイスラエルの研究などで発症や重症化を防ぐ効果が90~95%あるとの結果が出ている。国内でも検証を進めているが、ワクチンの先行接種を受けた医療従事者110万人を対象にした大規模調査では、おおむね臨床試験やイスラエルのデータと同等の予防効果があることが分かっている。

■変異株でも効果劣らず

――変異株でワクチンの効果が弱まるとの懸念があるが。

7月中旬時点で、陽性例に占めるデルタ株の割合は関東で6割、関西では2割と推定される。そうした中で、接種が進む高齢者や医療従事者への感染が抑えられているということは、変異株への効果も大きく劣るものではないことを示す。

ワクチンの効果は100%ではないので、感染する人は一定程度いるが、重症化のリスクは明らかに下がっている。

■引き続き感染対策徹底を

――接種が進めば、以前の生活に戻ることができるか。

接種が進む国の状況などを見ていると、ワクチンを全員に打てば元の生活に戻るという単純な話ではないと感じる。社会経済活動が活発になることで、感染率は低くても一定数が感染し、重症化している。また、ワクチンを接種した人が感染すると、ワクチンが効きにくい新たな変異株が出てくる可能性などもある。

一方で、ワクチンが登場したことで、現在のような社会経済活動が著しく制約される状況からは、出口が見えてきた。国内での接種開始から、現場の人々の努力もあり、前例のないスピードで接種が進んでいる。今後もしっかりと広げていくことが、現在の状況を変えることになる。

――接種後に気を付けることは。

ワクチンの効果として、自分の感染だけでなく他人にうつす「二次感染」のリスクも低くなることは確かだ。ただ、個人としてワクチンを打っていても、日本国内の接種率はまだ高くない。現在の感染状況も踏まえると当面はワクチンを打っても、マスクや消毒、密を避けるなどの基本的な感染対策は必要だ。

大規模な調査ではないが、飲酒を伴う会食を2週間以内に2回以上した場合、会食を0~1回する場合よりも、5倍近く新型コロナウイルスに感染しやすくなるという調査結果もある。感染の危険因子を改めて認識し、対策を徹底してほしい。

すずき・もとい 東北大学医学部卒。医学博士。長崎大学大学院客員教授。国立感染症研究所感染症疫学センター長として厚労省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに参加。 

(写真は7月25日一宮市内での自公合同国政報告会にて)

一宮市内での自公合同国政報告会
一宮市内での自公合同国政報告会
一宮市内での自公合同国政報告会
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