国土交通委員会で質疑
伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。
きょうは、法案審査、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部改正ということで、つい先週も、この東京都、一部地域で桜の上に雪が降り積もりました。また、昨年夏は、熱中症で幼い命が失われる。この気候変動は着実に私たちの生活に影響を及ぼしている。これは我々実感をするところであります。よって、その対策は大変急務でございます。
二〇一六年十一月四日に発効したパリ協定では、先進国、開発途上国の区別なく全ての国が削減目標を五年ごとに提出をし、国内の実施状況を報告するとともにレビューを受け、さらには、五年ごとに世界全体での実施状況を検討することになっております。
このようなサイクルを通して、二度目標、つまり、世界の平均気温上昇を工業化以前から二度以内に抑えるという目標を達成できるように各国が徐々に取組を強化していこう、こういう仕組みであります。
日本は、パリ協定が採択される以前の二〇一五年七月、二〇二〇年以降の温室効果ガス削減の目標である日本の約束草案として、国内の排出削減、吸収量の確保によって、二〇三〇年度に二〇一三年度比でマイナス二六%の水準にすることを決定をし、二〇一六年五月には、この削減目標の達成に向けた具体的な対策を位置づけた地球温暖化対策計画を策定をしたと承知をしております。
初めて削減目標の策定やそのための国内措置の実施などを義務づけられた途上国に対する支援につきましても、我が国は、二国間クレジット制度、JCMなどを通じて継続して貢献するためにも、日本の省エネ技術の進展は極めて重要、これに資する法案というふうに理解をしております。
そこで、最初に大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、運輸部門、業務部門、家庭部門を始め、温室効果ガス削減に向けての国交省の役割は、やはり、私はいつも申し上げるんですけれども、目に見えるもののほとんど全てを行政として見ているのが国土交通行政ですので、その役割は極めて重要だと考えております。
また、資源小国である日本における省エネ技術は、一つの資源開発とも言えると私は考えております。
省エネ技術の進展に向けたビジョンあるいは決意、まずは大臣にお伺いしたいと思います。
石井国務大臣 我が国のエネルギー消費量の約三割は住宅・建築物に関連する業務・家庭部門におけるものでありまして、また、約二割は交通政策に関連する運輸部門におけるものであるなど、温室効果ガスの削減を通じた地球温暖化対策につきまして、国土交通省の役割は非常に大きいと考えております。
地球温暖化対策の推進に向けましては、環境、経済、社会の統合的な向上に資する施策の推進を図る観点から、徹底した省エネルギーを推進することが、平成二十八年五月に閣議決定をされました地球温暖化対策計画の中でも、地球温暖化対策の基本的考え方として位置づけられております。
こうした観点から、国土交通省におきましても、関連する部門における省エネ対策に積極的に取り組んでいるところであり、本法案の関連する住宅・建築物や自動車等の省エネ性能の向上に取り組んでおります。
省エネ対策を進める上で、御指摘のとおり、関連技術の向上により効率的にエネルギー消費等の低減を進めることは大変重要な視点と考えており、国土交通省といたしましても、先進的な省エネ技術を活用した住宅・建築物の建設に対する財政的な支援、住宅・建築物分野の先進的な省エネ技術に関する情報の関連事業者への提供、自動車の環境性能の向上を促す燃費基準の設定や財政的支援等を推進をしているところであります。
また、本改正案に盛り込まれた、高い水準の省エネ性能を有する住宅の供給に係る努力義務を大手住宅事業者に課す、住宅のトップランナー制度の拡充等は、すぐれた省エネ技術の開発や普及を促す効果があると考えております。
今後とも、地球温暖化対策の推進の重要性を踏まえ、これらの施策によりまして、関連技術の向上を促進しつつ、住宅・建築物や自動車等に係る省エネ対策に積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
伊藤(渉)委員 ありがとうございます。
この気候変動の問題は、非常に長期的に見れば、世界全体の経済活動に制約を及ぼしてくる可能性も多分に含まれておりまして、そのときに、我が国が持つこの省エネ技術が大変高い価値を持つものに変化をしていく、そういう非常に可能性の高い取組だと思っております。
そういう意味では、パリ協定に基づいて定められている、今検討されている途中かもしれませんけれども、いわゆる長期計画の中におきましても、暮らし、住宅部門ということをしっかりと位置づけて、国土交通省には更に取組を強化をしていっていただきたい、また、それをしっかり我々としてもサポートしていきたい、こういうふうに申し上げておきたいと思います。
続きまして、今もございましたけれども、日本の省エネ技術、これは着実に進展をしている、こういうふうに認識をしておりますけれども、一方で、この法案の審査の中で、住宅・建築物の分野は、運輸などの他の産業に比べると省エネルギー化が、進んでいないと言うと言い過ぎのような気がしますけれども、少しそのペースがおくれているといいますか、マクロで見るとそういう状況になっているというお話を伺いましたけれども、その原因についてはどのように理解をされているか。住宅局長、よろしくお願いします。
石田政府参考人 お答えさせていただきます。
二〇一六年度におきますエネルギー消費量は、一九九〇年度比で、業務部門では二四・二パーの増加、家庭部門では一五・五パーの増加となっております。産業部門では約一三・五%減少し、運輸部門が約二パーの増加にとどまっているのに比べて、かなり増加が多い状況でございます。
この点につきましては、いわゆるエネルギー白書によりますと、業務部門についてはオフィスオートメーション化の推進による影響、また、家庭部門につきましては、世帯数が増加してきたこと、また家電製品の普及などが要因としてふえてきた部分があるということが指摘されているところでございます。
産業部門の製造業を中心としました省エネルギー化や、運輸部門の自動車の燃費の改善などによる消費エネルギーの減少、微増と比べまして、今申し上げた点が増加に影響しているというふうに理解をしております。
こうした状況の中で、住宅・建築の分野では、建築物省エネ法に基づきます適合義務制度やトップランナー、また、省エネ性能の高い住宅に対します税制、財政、融資上の支援など、総合的な対策を推進してまいりましたけれども、これに加えて、本法案に盛り込まれました各種施策を推進することで、住宅・建築物分野の省エネ対策を更に推進していきたいというふうに考えているところでございます。
伊藤(渉)委員 ありがとうございます。
まさに取組の加速、今回の法改正の中で、一つは、いわゆる小規模住宅につきましてもトップランナー制度の対象拡大をしておりまして、持家であれば注文住宅、貸し家であれば賃貸アパート、こういったところに対象拡大をする。
省エネ技術の進展という意味では、これは極めて重要であると思うのと、一方で、事業者の側に立つと、やはりそこにはコストが発生をしてきます。また、住宅取得者においても、そうした省エネ性能の高い住宅を買いたい、こう思うようないわゆるインセンティブ、メリットシステム、こういうことをやはり制度の中にビルトインしていかないと、なかなか進みづらいのではないか、こう考えるわけですけれども、この点につきましても、住宅局長、どのようなお考えですか。答弁をお願いします。
石田政府参考人 今御指摘いただいた中のまず住宅トップランナー制度につきましては、設計に関する規格に沿って住宅を大量に供給する事業者に対しまして、先進的な省エネ技術が採用された住宅の供給を促すため、市場での技術開発の状況等を踏まえて、高い水準の基準を、目標年次を設定した上で達成することを努力義務で求めるものでございます。
現在、住宅トップランナー制度自体は、みずから定めた設計に関する規格に沿って大量供給をすることによって大きな影響を与える、供給量の多い事業者を対象としてやっております。
この中に注文戸建てや賃貸アパートに関する大規模事業者も入れることによりまして、各事業者みずからが定めた設計に関する規格に沿った供給を図っていくということでございますので、その負担等につきましては、いわゆる、その大量供給によるコスト減がかなり機能するものと考えております。
また、本制度の対象とならない中小事業者などにつきましても、トップランナー基準の達成状況を自発的に宣言、公表するというような仕組みも導入することで、関係事業者と連携しながら、より一層これが幅広く推進できるようにしていきたいと考えております。
また、これの負担の問題でございますが、こうした取組とあわせまして、消費者が物件選択の際に省エネ性能の表示に係る情報を容易に把握できるように、住宅事業者に対して情報提供サイト等への省エネ性能の表示を促す、そういったことで、その表示のあり方を含めて検討していきたいと考えております。
これによって、省エネ性能がいいということは、当然ながら光熱費等がある程度浮くということになりますので、そういったことも含めて消費者の選択が可能になるように促していきたいと思っております。
また、財政的な面等につきましては、こういった措置とあわせまして、国交省、環境省、経産省の三省連携によりましてゼロエネルギー住宅に支援をさせていただくとともに、先導性の高い住宅の省エネプロジェクトに対して財政的な支援を行うなど、さまざまな財政、税制、融資制度上の支援をあわせて行うことを考えております。
今回の三十一年度におきましても、次世代住宅ポイント制度を創設させていただきますけれども、これについても、高い省エネ性能の住宅への支援の中の一部として行うこととしているところでございます。
伊藤(渉)委員 ありがとうございます。
いわゆるゼロ・エネルギー・ハウス、ZEHの推進、これは極めて重要だと思っておりまして、今、経産省、環境省、国交省、三省で予算的措置もしながらサポートしていると思います。その点も我々もしっかり応援をしていきたいと思います。
最後に、通告でいくと三番目と四番目、セットで聞かせていただきます。この法案の当初の制定時にも大変議論の一つでありましたけれども、既存建築物の省エネ性能の向上について御質問をいたします。
特に、大型の建築物を対象にすることができるのかが重要ではないかとこれまでも指摘をされておりますけれども、本法案制定時から今日までの既存建築物の省エネ性能の向上の状況、そして、その状況を受けて、今後の建築物の省エネ性能向上への取組の具体的なお考え、これを最後に聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
石田政府参考人 お答えをさせていただきます。
既存ストックに係ります対策を推進することは非常に重要でございます。このため、現行の建築物省エネ法におきましても、大規模な、若しくは中規模な既存建築物の増築、改築についても、適合義務制度や届出制度の対象として措置をしているところでございます。また、大規模な建築物を中心といたしまして、既存建築物の改修工事、省エネ改修に関しまして財政上の支援を、この過去三年で約四百件させていただいているところでございます。
こういった取組も含めまして、現在、既存建築物の省エネ性能向上を図っているところでございますが、先ほどお話ありましたパリ協定を踏まえた温暖化計画におきましても、既存住宅や既存建築物の改修によるエネルギー削減の目標が設定されております。原油換算で八十三・六万キロリットル相当を削減することとなっております。
この目標を達成するためには、二〇三〇年度までに、住宅については合計で百五万戸程度、建築物につきましては合計で二億七千万平米程度の省エネ改修が必要というふうに試算をしております。
現在までのところ、先ほど申し上げました施策の推進を含めまして、省エネ改修の進捗は、この目標の達成に向けておおむね順調に推移してきていると理解しております。
この後、先ほどのさらなる計画の推進等に向けまして、よりその目標達成を確実なものにするため、既存ストックについてのさらなる省エネ対策を講じていくことが非常に大切だというふうに思っております。
まずは、本法案において、既存建築物の増築、改築につきましても、適合義務制度や届出義務制度、説明義務制度が一定の場合対象になってまいります。こういったものの推進、また、予算制度若しくは税制制度の活用、先ほど申し上げました次世代住宅ポイント等の活用、こういったものを進めることによりまして、既存の住宅・建築物ストックに係ります省エネ対策により一層取り組んでいきたいと考えているところでございます。
伊藤(渉)委員 以上で質問を終わります。
この省エネ技術の進展、大変地味な部分もございますけれども、非常に可能性の大きいといいますか、重要な取組でございますので、我々もしっかり応援をさせていただきますことをお誓いし、質問を終わります。
ありがとうございました。
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