「日本版CDC(疾病対策センター)」創設を – 伊藤わたる衆議院議員

「日本版CDC(疾病対策センター)」創設を

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川崎市健康安全研究所 岡部信彦所長に聞く

2020/07/29 公明新聞3面

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、米国の疾病対策センター(CDC)のような感染症対策の司令塔となる組織の必要性が指摘されている。公明党は国会論戦や政府への提言を通じて「日本版CDC」創設を検討すべきだと訴えてきた。日本がめざすべき姿について、川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長に話を聞いた。

■(CDCとは)感染症対策の総合研究所/中韓などアジアでも広がる

――CDCとは何か。

岡部信彦所長 米国のCDCは研究から実地疫学調査まで幅広く行う感染症対策の総合研究所だ。特徴的なのは米国内だけではなく、国外で感染症が発生した場合も、積極的に調査団を派遣している。

もともとCDCは海軍から生まれた。米軍は世界中に展開しており、海外の感染症は国内的にも非常に重要だ。このため独自の予算を持っており、その枠内で非常にスピーディーに対応することができる。

――中国や韓国のほか、台湾、タイでもCDCが設立されており、欧州ではEUがE―CDCを設立している。

岡部 実際に重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)、鳥インフルエンザを経験したアジアの国々は、CDCの機能が国家として必要だと判断し、予算と人材を投入して強力に推進した。以前はこれらの国から日本に研修に来たり、われわれが出掛けて感染症の発生動向調査(サーベイランス)や発生への対応などを紹介していたが、あっという間に彼らの方が先を行ってしまった感がある。

――今回の新型コロナを受けて、日本でもCDCの必要性が指摘されている。

岡部 今になって始まった話ではない。20年以上も前から繰り返されてきた話だ。1997年、国立感染症研究所(感染研)に設置された感染症情報センター(現・感染症疫学センター)は、感染症に関する国内外の情報収集、解析、発信の機能を持つCDCのような組織をめざしたものだった。

2009年に新型インフルエンザのパンデミック(世界的流行)が起きた際の総括会議でも、感染研にCDCのような強い機能を持たせるべきであると提言されている。

――日本で設置が進まなかった理由は。

岡部 私見だが、一番は行政改革で目先の効率性を求めるあまり、人員と予算の削減を続けてきたことだと思う。感染症に対する危機管理、これは平常時から備えておく必要がある。今回、日本版CDC創設に向けた議論が再燃しているが、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」を繰り返してはならない。日本にとって、どのような形の機関が必要なのかを幅広く議論すべきだ。単なる建物だったり、名前だけの組織をつくっても意味がない。

■(めざすべき姿)専門家育成が根本/機能や規模、早急な議論望む

――日本がめざすべき形は。

岡部 根本は人材を育てることだ。感染研情報センターでは1999年から「実地疫学専門家養成コース(FETP)」を開設し、自治体や民間から研修生を募り、2年間の実務研修で疫学の専門家を養成している。優秀な人材を集めようと思ったら、研修中の生活や戻った後のポジションに困らないよう配慮する必要があるだろう。彼らに給与が出るようになるのに20年近くかかった。

また、海外からの研修生もオープンに受け入れることが重要だ。米CDCは海外から研修生や一流の研究者を、米国の負担でどんどん呼んでいる。研修後、彼らは自国に戻るが、何かあれば人的ネットワークを通じて情報が入ってくるようになっている。

――司令塔としての役割のイメージは。

岡部 今回、政府の専門家会議で10本の提言を作り、発信した。同会議は新型コロナ対策のためにできたものだが、本来は、そのような機関を常設化すべきだ。

CDCや世界保健機関(WHO)には、公式見解を発信する広報部門がある。緊急に集められた専門家会議が、会議から提言、広報まで全て自分たちでやるのは無理がある。事務局のある常設の機関とすれば、日ごろから感染症対策について議論することもできる。

米CDCと全く同じものをつくる必要はない。日本版に求められる機能や規模などについて、掘り下げた議論を早急に始めてほしい。

おかべ・のぶひこ 1946年、東京都生まれ。東京慈恵会医科大学卒。医学博士。WHO西太平洋地域事務局伝染性疾患予防対策課長、国立感染症研究所感染症情報センター長などを経て現職。政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議メンバーを務め、現在は分科会メンバー。

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