【トインビー対談開始50周年】~生命尊厳の「中道」の精神~聖教新聞・社説~ – 伊藤わたる衆議院議員

【トインビー対談開始50周年】~生命尊厳の「中道」の精神~聖教新聞・社説~

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50年前の1972年5月5日、歴史学者アーノルド・J・トインビー博士と池田先生の初対談が実現。

語らいは、対談集『21世紀への対話』に結実した。

対談の最終日、先生は博士に、自身へのアドバイスを求めた。

博士は「(両者は)人間がいかに生きるべきか、見解が一致した。あとは、あなたが主張された中道こそ、今後、あなたが歩むべき道なのです」と語った。

対談集の中で、両者が中道について意見を交わした箇所がある。

博士は国際事情の年報を執筆する際、普段は公平無私を心掛けていたが、独裁者の蛮行を記述する時には「心に正しいと感じたままの立場をとった」という。

そのことによって非難され、難しい状況に置かれたが、これが自分にとっての中道だったと振り返った。

先生は共感を示しながら「人間とは理想を追う存在であるということを踏まえ、しかも現実性を重んじていく――この両方を包含していくのが中道」であると述べた。

理想の重要性と、それを現実に貫く難しさが示された対話は、さまざまな二分法が存在する世の中にあって、中道の精神が、一方に縛られることなく、その双方を求め、生かしていくものであることを教えてくれる。

先生は中道について、後年、「どちらか一方を切り捨て、犠牲にする発想は持ちえません。なぜならば、いずれの一方にも、そこに『人間』がいるからです。真の仏法は円教です。一切を生かして新たな価値を創造する生き方が、『中道の大道』なのです」と指摘した。

人間の尊厳性に立脚することで、そこから新たな価値を生み出していく――東西冷戦の中、イデオロギーや国家体制の違いを超えて東西両陣営のリーダーと対話し、世界に確かな“平和の橋”を架けた池田先生の行動こそ、その範であろう。

コロナ禍、出口の見えない紛争――混迷の時代に、人類社会の亀裂と対立は深刻さを増している。

人類が直面する難局を乗り越え、共生と平和の社会を築きゆくために、今こそ、対談の中で博士が望み、先生が貫いてきた中道の精神に学ぶべきである。

そして、極端な意見にとらわれることなく、全てを包み込み、より高次の立場から人類益に貢献するという中道の根幹にある「生命尊厳」を一層強く訴えていきたい。

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