少年法改正の基本方針 – 伊藤わたる衆議院議員

少年法改正の基本方針

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2020/08/10 公明新聞2面

与党・少年法検討プロジェクトチーム(PT)は7月30日、少年法改正の基本方針について合意しました。合意のポイントについて、公明党の北側一雄副代表に聞きました。

■(適用年齢20歳未満、全件家裁送致)現行法の“骨格”を維持/18、19歳の更生の可能性を重視

――なぜ今、少年法改正に向けた議論を進めるのでしょうか。

北側 これまで多くの法律の適用に関して年齢の問題が議論されてきました。例えば、2015年には公職選挙法が改正され、選挙権年齢も18歳以上となりました。そして、18年の民法改正では、成人年齢が22年4月から18歳に引き下げられることになります。これに伴い、少年法の適用年齢も議論されることになり、最大の論点が18、19歳の取り扱いでした。政府、法制審議会でも長く議論が続けられていますが、与党間では昨年秋から集中的に議論を重ね、ようやく基本的な方向性で合意することができました。

――公明党は与党PTの議論でどのような主張をし、今回の合意に盛り込まれましたか。

北側 少年法の目的は罪を犯した少年の更生、再犯防止です。若い人の政治参加や成長を促すことを目的とした選挙権年齢や民法上の成人年齢の引き下げとは、そもそも法律の目的が違います。

公明党は、18、19歳は成長途上で可塑性(変化できる可能性)に富むため、更生、再犯防止のためには教育的な処遇が必要かつ有効だとの考えです。従って少年法の適用年齢は、成人年齢が引き下げられても、20歳未満を維持すべきだと主張し、与党PTで合意することができました。

また、少年による事件は全て家庭裁判所に送るとした「全件家裁送致」は、「適用年齢20歳未満」と合わせて少年法の基本理念を表した骨格です。家裁では調査官が、少年だけでなく、家庭や周囲からも事情聴取し、生い立ちも考慮して処分を決めていきます。そうした家裁の調査・審判が、これまで少年の更生や再犯防止に果たしてきた役割は大きく、実際に少年事件は減少しています。18、19歳の事件について、全件家裁送致は維持すべきだと訴え、これも自民党の理解を得ることができました。

■(原則逆送の対象拡大)重大事件は大人と同様

――しかし、18、19歳は成人となります。やはり17歳以下とは異なる扱いが必要ではないでしょうか。

北側 選挙権もある上に、民法上の成人となれば、大人と同じさまざまな法律行為ができるようになります。18、19歳の社会的地位の変化に伴い、社会的に重大な犯罪を起こせば、刑事上も一定の要件の下で大人と同様に取り扱うべきだとの指摘は、理解できないではありません。

現行制度では、懲役または禁錮に当たる罪の事件について、家裁が刑事処分に相当すると判断した場合は検察官に送致(逆送)し、大人と同様の刑事裁判とする仕組みがあります(少年法20条1項)。これまでの運用では、検察官に逆送される少年事件の多くがこの規定に基づくものです。これに加えて殺人罪や傷害致死罪のように故意で人を死に至らしめた事件は「原則的に逆送」すると規定しています(同条2項)。

与党PTの協議では、この20条2項の「原則逆送」の対象事件を一定の重大犯罪で拡大することとしました。具体的には、18、19歳の少年にかかる事件では、「現住建造物等放火罪」や「強制性交等罪(旧強姦罪)」といった法定刑の下限が1年以上の懲役・禁錮の事件を加えることで合意しました。

 ただし、とりわけ強盗罪については原則逆送の対象に加えたものの、グループによる犯行の中で見張りをしていただけといった罪状の軽いケースもあります。こうした場合は原則逆送の例外(同条2項ただし書き)とすべきではないかとして、家裁に罪状などを十分に考慮し、逆送するかどうかを判断する運用を求めました。

 いずれにしても、18、19歳の少年事件は、これまでと同様に全件が家裁に送られ、十分な調査手続きなどを経て、家裁が刑事処分相当と判断した事件だけが逆送されるという枠組みは何ら変わっていません。

 ――本名や顔写真など本人の特定につながる報道(推知報道)について、公判請求された後は解禁となりました。

 北側 18、19歳が社会的な重大事件を犯し、家裁が刑事処分相当として逆送し、刑事裁判所で審理される事件については、民法上の成人ということからも、また報道の自由に対する過度な規制とならないようにするためにも、推知報道の禁止を適用しないことにしました。あくまで公判請求された事件だけであり、交通事犯のような略式罰金事件は該当しません。

■「厳罰化」は誤解。運用に大幅な変化なし

 ――今回の与党合意に関して、一部報道では18、19歳に対する「厳罰化」と指摘されていますが。

 北側 これまでも社会的に重大な事件は、家裁の判断で逆送し、大人と同じ刑事処分を受けていました。原則逆送の対象を拡大したからといって厳罰化というのは誤解です。家裁が犯行動機や本人の性格、環境などを考慮して、逆送しないという例外扱いも残しています。この少年法改正で、18、19歳の刑事手続きや、その運用が大幅に変わることはないと考えます。

公明党の北側一雄副代表
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