核廃絶、日本がリードを
2020/08/07 公明新聞1面
公明党の山口那津男代表は6日午前、原爆投下から75年を迎えた広島市で記者会見し、核廃絶へ日本が果たすべき役割などについて大要、次のような見解を述べた。
【核廃絶に向けて】
一、唯一の戦争被爆国として、日本が「核兵器のない世界」に向けたリーダーシップを発揮すべきだ。2017年に国連で採択された核兵器禁止条約は、核兵器を持たない国が核不拡散の砦として生かす意義があり、核保有国の核軍縮を促すことにもなり得る。日本の国是である非核三原則を国際規範化したものと捉えるべきだ。戦争被爆国としてめざすべき大局的な道筋は条約の流れと一致する。
一、条約を巡っては、核保有国と非保有国の意見の違いが鮮明となっているのも事実だ。このまま放置していては核廃絶の現実的な前進はない。日本が両グループの対話を促し、共通の認識をつくり出した上で、核軍縮をリードすべきだ。
一、具体的には、核軍縮に関する「賢人会議」が取りまとめた「議長レポート」を、今後の核拡散防止条約(NPT)運用検討会議の議論に反映させ、合意形成の道を開いていくべきだ。議長レポートでは、各国が取るべき行動などについても触れられている。
【被爆資料の保存】
一、被爆の経験を持つ方々が高齢化し、自ら語り継ぐことが年々困難になっている。被爆の実相を後世に伝え残すには、原爆遺構や証言、画像、映像などの資料を保存する必要がある。その方向性を早く示し、着手することが大切だ。
一、(広島市にある被爆建物「旧陸軍被服支廠」について)党広島県本部が4棟全てを保存すべきだと主張している。さまざまな意見はあるが、早く合意をつくり、具体的な一歩を記すべきだ。
【安全保障政策】
一、(敵基地攻撃能力について)政府は与党の意見を聞いた上で検討したいとしている。公明党も政府に意見を伝えて、初めて政府・与党で合意形成が図られる。政府は一貫して政策判断として持たないと述べてきた。これを変える必要があるのか慎重に議論しなければならない。日米同盟の中で米国が矛、日本が盾の役割を持つことで全体として抑止力につながるようにしてきた。こうした基本の下、憲法の専守防衛の理念の枠内で、陸上型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」に代わるものとして何がふさわしいか政府・与党で議論していく方向性だろうと考えている。
■75回目、広島原爆の日
広島は6日、75回目の原爆の日を迎えた。広島市中区の平和記念公園では、市主催の「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」(平和記念式典)が開かれ、被爆者や遺族ら785人が参列。松井一実市長は平和宣言で、日本政府に「世界中の人々が被爆地ヒロシマの心に共感し『連帯』するよう訴えていただきたい」と要請し、核兵器禁止条約の批准を求めた。
式典には安倍晋三首相や赤羽一嘉国土交通相(公明党)ら政府関係者のほか、公明党からは山口那津男代表をはじめ、斉藤鉄夫幹事長、谷合正明参院幹事長、山本博司参院議員、田川寿一、栗原俊二、日下美香、尾熊良一、下西幸雄の各広島県議、渡辺好造、西田浩、碓氷芳雄、石田祥子、川村真治、並川雄一、田中勝、川本和弘の各広島市議が出席。83カ国と欧州連合(EU)の代表も出席した。
原爆が投下された午前8時15分には、マスクを着用した遺族代表らが「平和の鐘」を打ち鳴らし、1分間の黙とうをささげた。
松井市長は宣言で、新型コロナウイルスの脅威を乗り越えるためにも世界が連帯する重要性を強調。今の平和な広島があるのは先人が苦難に立ち向かった成果とし、「これからの広島は、世界中の人々が核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に向けて『連帯』することを市民社会の総意にしていく責務がある」と訴えた。
世界の指導者に対しては、核軍縮への建設的対話を継続し、核に頼らない安全保障体制構築に向け全力を尽くすよう求めた。
安倍首相はあいさつで、「非核三原則を堅持し、核兵器のない世界の実現に向けた国際社会の取り組みをリードする」と述べた。
参列予定だった国連のグテレス事務総長はビデオメッセージを寄せた。
式典では、松井市長と遺族代表が、この1年間に死亡が確認された4943人の名前を記した原爆死没者名簿を慰霊碑に納めた。犠牲者は32万4129人となった。被爆者健康手帳を持つ人は今年3月末時点で全国に13万6682人で、平均年齢は83歳を超えている。
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