10兆円の大学ファンド
答える人=党科学技術委員長(衆院議員) 伊藤渉さん
「科学技術立国」の実現に向け、世界トップクラスの研究力をめざす大学を支援する10兆円規模の「大学ファンド(基金)」制度の基本方針案が8月末にまとまり、年内にも対象校の選定が始まります。基金の目的や概要について、公明党科学技術委員長の伊藤渉衆院議員に聞きました。
■Q 目的は?
■A 日本の科学技術分野での国際競争力高め革新促す
アスカ 基金の目的は。
伊藤 近年、先進国が科学技術の向上に力を入れ、技術革新による産業構造の転換が急速に進んでいます。しかし、日本の科学技術分野への投資は十分でなく、世界に後れを取っているのが現状です。
研究力を測る主な指標の「Top10%補正論文数(他の論文に多く引用される注目度の高い論文数)」は、この20年間で4位から12位まで低下。他の先進国では増加している博士号取得者の数も減少傾向です。大学ファンドは、こうした状況を打開し、日本の科学技術分野での国際競争力を高め、技術革新を促すために創設されました。
アスカ なぜ基金という形での支援なのですか。
伊藤 海外の主要大学では既に数兆円規模の独自基金を設け、その運用益などを活用して研究力を向上させていますが、日本の大学の基金は数百億円程度です。
大学ファンドは2021年度に設置され、10兆円規模の原資から年3000億円の運用益を上げる目標を掲げます。これを基に24年度から国内大学へ支援を開始します。
■Q 具体的な内容は?
■A 世界トップクラスめざす対象校に年数百億円支援
アスカ 今回の基本方針案の具体的な内容は。
伊藤 対象校を「国際卓越研究大学」として数校認定し、1校当たり年数百億円程度を支援する予定です。資金を基に各大学は、最先端の研究環境の整備や、若手研究者の育成、新たな学問分野への投資などの取り組みを進めます。
認定に当たっては、これまでの研究実績と共に、世界トップクラスの研究力を実現するためのビジョンや行動計画などを提示してもらい、評価することにしました。また、長期的な取り組みを支援するため、計画期間は最長で25年としています。
アスカ 一部の大学に支援が偏るとの声もありますが。
伊藤 世界の著名な大学と競い合えるレベルに押し上げるために、対象校が限られることはやむを得ません。一方で、日本全体の研究力を底上げするには、地方大学を含む幅広い支援も別途、必要だと考えています。
23年度予算に対する文部科学省などの概算要求には、地域の中核大学や特色のある研究を行う大学への「総合振興パッケージ」の充実が盛り込まれました。予算化を実現し、地域の大学の研究力向上を進める決意です。
■Q 公明党の取り組みは?
■A 若手研究者の待遇改善を一貫して訴え制度に反映
アスカ 公明党の取り組みは。
伊藤 政府への申し入れなどを通じて、財政基盤の弱い大学を支える基金の必要性を強調してきました。
また、若手研究者らとの意見交換を重ねる中、研究機関のポスト不足などから、将来に不安を抱え、研究を諦めてしまう人が多い実情が分かりました。そこでポストの充実や研究に専念できる環境の整備など若手研究者の待遇改善を一貫して訴えてきました。
今回の大学ファンドによる支援には、若手研究者の育成や経済的な負担軽減への取り組みが盛り込まれるなど、党の主張が反映されています。
アスカ 今後の決意は。
伊藤 「科学技術立国の実現」は成長戦略の重要な柱の一つです。公明党は先の参院選公約に「科学技術イノベーショントータルプラン(仮称)」の策定を掲げています。
同プランに、若手研究者への一層の支援や地方大学を含めた大学の活性化などを盛り込み、科学技術分野の抜本的な強化を図っていきます。
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